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「京一だってもてるだろ?」
と言った俺に、京一は呆れた顔をして言った。
「・・・もててたらクリスマスにこんなとこいねーよ」
う。正論とは思いつつも、がっかりした。かなり。
することないから来てくれただけなんだよな、期待しちゃいけない・・・。
枕元の椅子に座る京一から俺の表情が見えないように、寝返りを打って顔を背けた。
「ひーちゃん、今日だれか誘いたいやついたんじゃないのか?
こんなに花ももらってんだし、よりどりみどりだろ」
そんな俺にお構いなしに追い討ちをかけるような京一の言葉にため息が出てしまう。
なんでわかんないかなあ・・・俺はこらえきれずに言ってしまった。
「京一とがいいんだよ!」
「・・・はあ?」
「だから!京一と過ごしたいの!」
「・・・俺と?なんで?」
「なんでって・・・京一が・・・好きだから・・・に決まってんだろ!」
俺の言葉に京一は唖然としている。
俺は布団から手を出して京一の方へ伸ばした。
届きそう、だけど京一が手を出さなければ触れることはできない距離。
この手を京一はどうするんだろう。
今更ながら心臓がドキドキした。これはカケだ。
京一は動かない。
京一に向かって伸ばした手が、掴まるところがなくてだるくなってくる。
カケに・・・まけたのか・・・。
重力のままに心のままに、俺は手を下ろした・・・だがその手は下にだらりと落ちない。
京一がつかんでいた。
驚く俺の目と京一の目が合う。
京一が枕元の椅子から立ち上がってそのまま背をかがめ、唇と唇が触れた。
優しい、一度だけのキス。
そっと唇を離した京一は真っ赤になって頭をぼりぼりと掻き、椅子に乱暴に座った。
その間も、俺の手を離さない。指と指は、絡められたままだ。
俺はその温かさに、なにかそわそわしながらも、同時に安心してもいた。
「ね・・・京一、ちょっと眠ってもいい?」
「あァ。俺はこうしてるから、寝ろよ」
目が覚めてもとなりに京一がいるなんて。ずっと手を握っていられるなんて。
起きるのが楽しみで眠れない、なんてちょっと変だけど・・・
俺は京一を見た。
京一は握っていない方の手で俺の頭をなでて布団をかけ直してくれた。
そして握った俺の手にキスしたので、俺も握った京一の手にキスして、瞼を閉じた。
どこからか、クリスマスの曲が聞こえる・・・。
メリークリスマス
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