□■□クリスマスは君と一緒に□■□





「一緒にいたいんだ。仕事なんて行かないでくれ!」

俺は壬生の腕をつかんでいた。
病院にいる間、俺の頭の中は壬生のことでいっぱいだった。
退院した今、壬生と少しでも長くいたい。
だからこれは俺の本心だった。
待っているなんてできない。
今目の前にいる壬生を手放すなんてできない。

俺はそのまま告げた。
こんな危険な仕事やって欲しくない。
失いたくないんだ。
とも言った。

壬生は・・・泣いていた。

「龍麻・・・。困らせないでくれ・・・」
「だ、だって・・・」
「僕は好きでこの仕事をやってるんじゃない。だけど僕がこの仕事をやってるのは
 誰のせいでもないんだ。誰かのせいにしたくないんだ。うらみたくないんだ。
 僕はただ・・・この仕事に終わりが来るのを待ってるんだ・・・」
「壬生・・・」
「やめることはできないんだよ・・・」

壬生は踵を反すと早足で去っていった。
俺は・・・壬生に余計なことを言ったんだ。
壬生は仕事が好きではないがやらなくてはいけない・・・。
それに明確な理由があれば耐えられるだろう、が、
「母のため」
に人殺しをする自分。
「母のため」
に人殺しをしなくてはいけない自分・・・。
そう思ったら人殺しを「母のせい」にしてしまう・・・。
人を殺す理由を壬生は考えちゃいけないのだ・・・。

「ごめんな、壬生・・・。」

もうとっくに姿の見えない名前を呼んでみる。
壬生の腕をつかんだ手がかじかんでヒリヒリと痛くなっていた。


END


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