「ひーちゃんひーちゃん!」
と遠くから呼ぶ声がする。
京一かな・・・。
俺が無視していると、
「ひーちゃん!起きろよッ!」
と言う声とともに衝撃が走った。
「いてっ!」
目がさめる。
俺は・・・ベッドの下にいた。
京一が落としたらしい・・・。
「きょういちー!なーにすんだよっ」
引っぺがした掛け布団を持ったままの京一を捕まえてベッドに引きずり込む。
「もう昼だぜー?いい加減起きろよなー・・・?」
とふくれる京一に
「チューしてくれたら起きる」
とおはようのキスをせがむ。
「なッ・・・」
ちょっと顔を赤らめてベッドから出て行く京一に
「京一がキスしてくんないと起きないー!」
と駄々をこねてみる。
京一は怒ったのか呆れたのか俺をにらんだあと
噛みつくようなキスをしてきた。
俺は京一の体を引き寄せてもう一度ベッドに引きずり込む。
そしてTシャツを脱がそうとしたところで京一から痛恨の一撃。
いってえ!
ん?・・・おたま?
京一が俺に振り下ろしたのはおたまだった。
「なにそれ?なんか料理してんの?」
「あッ、そうそう。メシ作ったから起こしてんのッ。食うだろ?」
と言って部屋から出ていく京一に思わず舌打ちする。
おたまさえ持ってなけりゃな・・・。
京一の向かい側に座ると、待っていたのはオムレツ。
オムレツって、おたま使うか・・・?
まさか撃退用に持ってたんじゃないだろうな・・・。
そう思いつついやに茶色いオムレツを一口食う。
・・・まじい。
ガンになるぞ。この焦げかた。
でもまだ食べてない京一が俺の方をさりげなくうかがってるのがわかったから
にっこり笑ってうまいよ、と言う。
京一がさもどうでもいいように、あーそう、と言う。
そう言いながら顔がにやけてるし顔が赤い。
そして京一が一口食べた。
・・・・・・。
無言でソシャクしている・・・。
そして。
おもむろに立ち上がると俺と京一の両方の皿を持って
台所に行き、中身を捨てた。
慌てて後を追った俺に京一が振り向いて怒鳴る。
「なんで嘘つくんだよッ!」
・・・ていうかなんで俺が怒られんの?
困ってる俺にまだ京一が怒鳴る。
「あんなもん食ったらビョーキになるだろッ!」
・・・作ったのは京一だろ・・・?
「なんでうまいなんて言うんだよッ!」
・・・まずいなんて言えないじゃないか。
俺はなにか言おうと思ったけど
京一が料理を失敗したことにガキみたいに泣きそうになってわめいてるから
なに言っても聞かねーな、と思って黙ってた。
ただ黙って京一を抱きしめてキスした。
そのキスが長かったのでまだジタバタしてた京一もおとなしくなって
ただ抱かれるままになった。
俺は唇を離して京一の頭をなでる。
「にあわねーことするからだよ、京一」
「うるせーなあ!お、俺はひーちゃんのためにと思って・・・」
「うん。わかってるよ、京一。嬉しいよ。でもさ・・・」
「あんなの作るなってんだろ!?」
「ちがうよ。今度は二人で作ろう」
「う・・・。ひーちゃんの方がうまいから?」
「ちがうって。今日は、俺が寝てる間に買い物行って、作ったんだろ?」
「・・・そうだけど・・・」
「京一がいないことにぜんぜん気づかなかった俺がなに言ってんだって感じだけどさ、
せっかく二人でいるんだから、一人でどっか行ったりすんなよ。
一緒に起きて、一緒に買い物行って、一緒に作ろうぜ。な?京一」
俺が笑ってそう言うと、京一が少し驚いた風に見上げる。
そしてそのまま京一が俺を見続けるので
「なに見てんの?」
と聞くと、京一ははっと我に帰り、
「べ、べつにッ!」
と言って下を向いてしまった。
「俺のこと、惚れ直したんだろー?」
と言ってみたら京一が赤くなって
「ば、ばっかじゃねーのッ!」
と怒鳴った。
どうやら図星らしい。
俺は京一をきつく抱きしめて
「もっとずっと、京一と一緒にいたいんだよ。
だからお前が起きたら俺を起こせばいいし、俺の隣りにいろよな」
と言った。京一は小さい声でうん、と言った。
「京一・・・キスして。お前から」
「え・・・」
京一はすねるように口を尖らせたがゆっくり顔を近づけてきて、
そのくせかすめるようなキスをしてきた。
お返しに長いキスを贈る。
京一が俺の首に腕を回してきたので
これはいけるぞ、と思ったとき、
京一の腹がグウ、と鳴った。
一瞬手が止まったけど聞こえないふりをして再開する。
でもすぐに、今度は俺の腹がグウ、と鳴ったので、
俺は京一と顔を見合わせて笑ってしまった。
「何か食べ行こう、京一」
「ん・・・そーだな」
俺たちは上着を着て靴を履く。
帰ってからたっぷりしよう。
と思ってにやりと笑った俺を見て、
京一はそんなに腹が減ってたのか、と言った。
ばかだなあ。
おしまい。
▼たまきさんのコメント▼
新婚といえば料理!そして失敗!めちゃくちゃありがちですぞー自分!
555ヒットを踏んでくださったカルノさんにささげます・・・こんなんでいいですか・・・?
「書き直せ!」も可ですぞー!
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