俺は緋勇龍麻。
かわいいやつは男でも女でも容赦なく頂く。
でもしょうがないんだって。
みんな俺に食われたいんだよ。
そう意識してるかどうかは知らないけどさ。
俺はまだクリーニング屋でバイト中。
おっちゃんはもう退院したから辞めるはずだったんだけど
おばちゃんたっての願いでさ。
龍麻くんがいてくれたらおばちゃん仕事はかどるのよー
なんて言うし、おっちゃんも俺のこと大好きだから
バイト代上げてもいいから続けてくれーなんて言うんだよ。
まあ俺はもうちょっと続けてもいいかなーなんて思ったから
にっこりと笑って、僕もこの仕事好きですから、なんて言っといたわけ。
おっちゃんたちは感激して泣かんばかりだったよ。
まあこういうのも・・・悪くないかな。できなかった親孝行みたいでさ。
おっちゃんが復帰して宅配サービスを再開すると、クリーニング屋は忙しくなった。
・・・といっても、忙しいのは大体俺が学校行ってるときだけ。
放課後とか日曜日はあまり忙しくないから、
ほんとに俺っている意味あるのかなあ、と思ってた矢先、
俺にしかできない仕事が舞い込んできた。
「龍麻くーん!いま電話あったんだけど、宅配してくれって言うのよ」
とおばちゃんが不思議そうに俺に言ってきた。
おばちゃんの横からおっちゃんが、宅配なら俺が行くよ、と言う。
宅配はおっちゃんの仕事なのだ。
「それがねえ・・・龍麻くんに来て欲しいってことなんだけど・・・」
おっちゃんは、それを聞いてふうーん、と言ってニヤッと笑った。
「まあ、龍麻君はもてそうだからなあ。固定ファンがいるわけか」
おばちゃんも、そうかもねえ、なんて言ってニコニコしてる。
「そういうわけだから・・・その子のためにも行ってくれる?」
「あ、ええ、いいですよ」
「ええと・・・ちょっと待って、地図地図・・・」
おばちゃんは奥から地図を出してきた。見ると、新宿ではない。
「バイクだからそんな遠くはないけど・・・わざわざうちに頼むなんて、
よっぽど龍麻くんが好きなのね」
俺は困ったような顔をしておく。
おばちゃんはそんな俺を見て笑い、がんばってね!と言った。
そして地図をめくって俺に見せながら言った。
「聞いた住所だとこの辺なんだけど・・・あ、ここね、霧島さん!」
霧島はあの霧島なんだろうか。
でもあの霧島以外に、霧島って人は知らないし、
俺を名指しで頼んでくるってことは俺を知ってるんだろうし。
と思ったところで、地図に書かれた家の前に着いた。
表札は霧島。あってる。
洋風のでかい家だ。いいなあ。
チャイムを押す。
すぐにドアが開く。
そこに立ってたのはやはり霧島諸羽だった。
「あッ!先輩!来てくださったんですねッ!」
「霧島が呼んだんだろ?」
しょっぱなから強い態度に出てみる。
普段は温厚な顔しか見せない緋勇龍麻だけど二人のときは違うぞアピール。
霧島はサッと赤くなって
「あ、あのっ先輩と・・・お、お話をしたくて・・・すいません迷惑でしたか?」
と小さくなるのが可愛くて、俺は勝手に玄関に上がって
「迷惑なんかじゃないよ。俺も霧島に会いたかったよ」
とにっこりと笑って言った。さりげなく「会いたい」にすりかえるのも忘れない。
そして玄関に降りている霧島と俺との距離がいつもよりずっと短いこともさりげなく忘れない。
霧島は嬉しそうにありがとうございます、と言ったが
すぐ近くに俺の顔があってしかも少し目を細めて自分のこと見てるのがわかると
真っ赤になって下を向いてしまった。
「あ・・・あのッ!あ、上がってくださいッ!」
「うん。おじゃましまーす」
霧島は後ろにいる俺に見られているのではないかと緊張した足取りで奥へ歩いていく。
・・・それにしてもでかくていい家だな。
吹き抜けがあって通路が長くて、・・・うわ!らせん階段!家の中だぞ?
そして霧島が開けたドアの先にはまた広い部屋があって・・・多分リビングなのだろう。
白いグランドピアノ!?なにもんだコイツ?
そして俺は霧島と結婚したら何不自由なく暮らせるよなあ、と思った。
しかもかわいいし。
俺がじっと見てるからだろう、霧島は紅茶のカップを出すのに手が震えて少しこぼした。
「あちっ!」
「あッ!す、すいませんッ!!」
霧島は慌ててタオルを持ってくる。
そしてソファーに座ってる俺の両膝の間に座り込んで、
「こッここですかッ!?」
といいながら俺のズボンをごしごしこする。
・・・そんなとこ触られるとさあ。
俺は自分の足の間にいる霧島をそのまま抱きしめる。
霧島はからだを固くしたが拒んでないのがわかる。
俺がくちづけて舌を入れると、霧島の舌も、おずおずと絡められる。
そのままからだを反転させて、ソファに押し倒した。
そこに、電話が鳴った。
霧島のシャツのボタンを外そうとしていた俺の手が止まる。
そして霧島と目が合うと、霧島が真っ赤になって、どうしよう?と目で尋ねてきたので、
俺はにっこり笑って、出なよ。と言ってやった。
霧島が泣きそうになる。
そしてからだを起こした霧島に、宅配の洗濯物、どれ?と聞き、帰るそぶりを見せる。
霧島は、部屋の隅にあった紙袋を指差して、あれです、と小さな声で言うと、
走って行って電話に出た。
「ハイ、霧島です・・・あ、さやかちゃん?」
俺は立って行って紙袋の中を見る。少ししか入ってない。
俺を呼ぶ口実にかき集めたのだろう。
その紙袋を持って、部屋を出る。
玄関までの通路に電話が置いてあって、霧島がいた。
舞園に何か相談されているようで、霧島はただ相づちを打っている。
そして俺の方を見て、俺が紙袋を持って帰りそうになっているのを見て、
なにか言わなきゃ、とか、電話中だし、とかいろいろ考えてパニックになっているようだった。
ただ潤んだ目で俺を見ている。
・・・しょうがねえなあ。
俺は紙袋を床に置いて、霧島を後ろから抱きしめた。
そして受話器を当ててない方の耳に口づける。
霧島のからだが小さく跳ねた、が声は出さない。
首を舐めつつ、後ろから霧島のシャツのボタンをはずして脱がす。
ジーンズの中に手を入れる。
霧島は耐えられなくなって電話を切ろうとした。
だが許さない。
コード付き電話なのをいいことに、コードが伸び切るまで電話から遠ざからせる。
もう切れない。
声を出せない霧島は、下手に相づちも打てなくなって
ただ壊れるほど受話器を握り締め、もう片方の手は握りこぶしを作って
必死に我慢していた。
からだが細かく震え、涙がいっぱいたまっている。
俺は霧島から受話器を取り上げた。
電話を切ってくれるのかとほっとした霧島の口に受話器を突っ込む。
そして足を持ち上げ、後ろから俺のも突っ込む。
霧島が小さく悲鳴を上げた。
霧島の口にあてがわれた受話器から、舞園の声がどうしたの?と心配する聞こえる。
でも霧島は答えられない。
声も出せず、息も満足に継げない苦しさで、霧島の目からぼろぼろと涙が流れた。
「声出しなよ・・・舞園に聞かしてやれば?」
霧島の耳に口を押し当てて囁く。
受話器を押し込まれて開きっぱなしの口からよだれを流しながら
霧島がキッとにらんだので、俺は腰を動かした。
からだがビクッとはねた霧島の口からとうとう快楽の声が漏れた。
もう限界だろう。
俺は霧島の口からべたべたになった受話器を取って、電話を切った。
ほっとして力が抜けた霧島を、今度は優しく責め立てる。
よだれが乾いていない唇から絶え間なく喘ぎ声がもれた。
今までの分を取り返すかのように。
そしてふたりが出したものが下に落ちた霧島のシャツを汚す頃、
また電話が鳴った。
途中で切られたのを舞園が不思議がっているのだろう。
霧島は電話に出ない。
それが、舞園には言えない秘め事をしていたんだと、霧島自身気づいて赤くなった。
俺は服を着て、汚れた霧島のシャツを紙袋に入れ、伝票を切った。
『次回もご利用くださいませ』
霧島がそれを見てちょっと口を尖らせたので、
「またすぐご利用するだろ?」
と言ってやった。霧島は赤くなって答えない。
「だって、お前わざとタオルであんなとこ拭いたんだもんな?」
霧島は唇をかんだが、
「先輩だって・・・紅茶がかかってないくせに熱いとか言ったじゃないですか・・・」
「あ、ばれてた?」
顔を上げた霧島と目が合って、俺たちは笑った。
店に帰ると、おっちゃんとおばちゃんが興味津々といった風に話しかけてきた。
「ね・・・どんな子だった?かわいい?」
「ええ、まあ・・・かわいい子でしたよ」
「あらー!よかったわねー。おばさんだったら龍麻くんに悪いなーって言ってたとこだったの」
「で・・・ずいぶんと時間かかってたけど、なんかあったのか?」
「あ、いえ、お茶をごちそうになって・・・」
「まー!やるわねえ。最近の子は」
「おい!龍麻君はそんなことないぞ。こんないい子どこさがしたっていないだろう!」
「やーねえ。わかってるわよ。龍麻くんじゃなくて相手の女の子のはなしよ」
「なんだそうかそうか。なんにしても、龍麻君のおかげでお客が増えるかもなあ」
俺をよそに夫婦で盛り上がっている。
俺はニコニコして、お役に立てたら嬉しいです、と言った。
おしまい。
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