日曜日になると京一が来る。
そして龍麻の部屋でテレビを見たりゲームをしたり食事をしたり、
まあもちろんイチャイチャしたりして一日を過ごす。
それが普通の日曜日だった。
そして今日も、そんな日曜日だった。
よる10時、京一が帰るというのを龍麻は引き止める。
それをなだめすかしつつ玄関まで行って、靴を履き、鍵をあけた京一が、
龍麻を一人にしてしまうのを詫びるように、
玄関まで見送る龍麻にキスをする。
それも、いつもの日曜日だった。
ただ今日は、キスの後に、京一がなぜかちょっと怒ってるように、言った。
「今度の日曜は・・・外で会おうぜ」
それを聞いて龍麻はあからさまに嫌な顔をした。
「えー・・・だってー・・・」
「だって、なんだよ?」
「外だとエッチできねーもん」
龍麻の言葉に京一は無言でボディーブローを入れる。
龍麻はそれを軽々と受け止めて、そのまま京一を引き寄せて抱きしめた。
「いいじゃん家で・・・つまんないの?」
「・・・そうじゃねーけど、とにかく来週は外!2時に駅前広場なッ」
不満そうに口を尖らす龍麻を押しやって、反論されないうちに京一はドアを開けた。
その素早いサヨナラに、龍麻は驚いたように京一を呼ぶ。
京一は聞こえない振りをして外に出て、ドアを閉めた。
・・・でもちょっとかわいそうに思ったので、またドアを開けて、
そこに突っ立ったままの龍麻にキスをした。
龍麻の手が自分を抱きそうな気配がして京一はすぐ体を離し、
照れたのでなにも言わずに、龍麻の部屋を後にした。
−次の日曜日−
龍麻は時計を見た。待ち合わせ場所についてからもう何度見ただろう。
2時って言ったよな。
だが時計は3時を指している。
京一の家にさっき電話したけど誰も出なかった。
何かあったんじゃないだろうか、という思いと、
自分から呼び出したくせに遅れやがって、という思いがごっちゃになって、不機嫌になっていた。
そこへ、待ち望んでいた声がした。
「ひーちゃーん!!」
全速力で走りながら、京一が来た。
龍麻の元につくと、汗だくになりながら肩で息をしている。
「なんで1時間も遅れるんだよー」
無事に京一が来てほっとしたのもあり、走ってきたからいいや、ってのもあり、
当初は怒鳴りつける予定だったのにあっさり許している龍麻。
ごめんごめん、といいながらニコニコしている京一。
外で会うのは新鮮で、なんだか嬉しい気持ちでいっぱいになるふたり。
「で、どこ行くの?京一」
「え・・・えーと・・・決めてない・・・」
「・・・じゃあなんで外で会おうって言ったの?」
「んー・・・まあいいじゃん」
京一にそう言われて、龍麻は腑に落ちないと思いつつも、
外で待ちあわせたりするのもたまにはいいかもなあ、と思ったので納得することにした。
「じゃあ・・・ぶらぶらするか」
龍麻の言葉に京一はこくこくと頷いて、二人は並んで歩き出した。
ゲームセンター。バーチャ3tb。後ろに並んで待ってる人を無視して二人で対戦し続けた。
熱くなった京一が天地無双を出しそうになって龍麻が慌てて止める。その隙に京一勝利。
ビリヤード。真剣な龍麻の表情に、京一は赤くなって身が入らず、負けた。
その後はデパート。おもちゃ売り場で、今時のガキは恵まれてんなあ、なんて言いながら
好きだったキン肉マンの超人の話で盛り上がった。
それからガーデニングコーナーで龍麻の部屋に置く小さな観葉植物を買って
デパートの屋上広場で一休みした。
そのころにはもうとっくに日も暮れていて、
プラスチックのジャングルジムで無邪気に遊ぶガキンチョたちを眺めながら
龍麻は京一に言った。
「こういうのも、結構楽しいな」
「だろ?」
京一はニコニコしてる。
「でも、なんでいきなり?どこ行くかも決めてないのに・・・」
龍麻の言葉に、京一は鼻をこすりながら言った。
「忘れてんの?明日、ひーちゃん誕生日だろ?」
「え?・・・あー、そういやそうだな」
「一日早いけどさー、まあこういうのもいいかなって。誕生日くらいはな」
「・・・誕生日だったら、もっといいとこ行くもんじゃないか?」
「んー・・・まあそうだけど。でも、楽しかっただろ?」
そうだな。誕生日だからと、下手に気合いを入れられるよりずっといい。
もしかしたら、いろいろと考えたりしたのかもな、京一は。
龍麻が京一を見つめると、京一は恥ずかしそうに下を向いた。
そしてポケットから小さな包みを出して、下を向いたまま龍麻に渡す。
「・・・なにこれ?」
「・・・誕生日の・・・プレゼントだよッ・・・」
ガラにもないことするもんじゃねーな、とブツブツ言いながら京一は背中を向けてしまう。
その背中に向かって龍麻は尋ねた。
「京一、これ買ってて待ち合わせに遅れたの?」
「・・・そうだけど」
龍麻は京一を後ろ抱きにしながら言った。
「・・・遅れんなよな」
プレゼントなんていいから、とは言えない。京一がくれたのだから。
「京一といる時間、短くなっちゃうだろ」
京一は後ろから抱く龍麻の胸にからだを預けながら、うん、と言った。
そして振り向いた京一の唇に、龍麻が唇を合わせようとしたが、
ふと視線を感じた・・・
振り返ると、さっきまできゃあきゃあ言いながら遊んでたガキどもが、じいーっとこっちを見ている。
「・・・・・・・帰るか・・・」
キスをお預けされてお互いにがっかりしつつ、ガキの視線から逃げるようにエレベーターに乗り込む。
エレベーターには人がいなかったので二人は下に着くまでのあいだキスをした。
エレベーターが止まるのを感じて名残惜しそうに唇を離した龍麻は、
「俺の誕生日、明日だから」
と言った。エレベーターが開いたので京一の手をひいて外に出る。
「だから今日泊まれよ。明日祝おう」
「ひーちゃん・・・なんかムリヤリだぞ、それ」
そう言いつつ京一は、つながれた手を離すことができない。
こんなに人がいるところなのに・・・。
「また・・・こうやって、たまには外で会おうな」
そんな龍麻の言葉にも京一は照れてしまって、うん、とだけ言った。
「でも外で会ったときは、そのまま泊りに来いよ」
京一は顔を赤くして、うなずいた。
「じゃないとエッチできねーだろ?」
ニヤッと笑う龍麻にふだんの京一ならキックをいれるとこだったが、
素直に、うん、とうなずいた。
顔を真っ赤にした京一がかわいいので、龍麻は自然と早足になって家に帰った。・・・ふたりで。
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