□Winter Lip□ |
冬はキライだ。寒ィし、朝起きるのは辛ぇし、道が凍ると滑るし。 良いことなんかひとっつもねぇ。今まではそう思ってた。
「あぁ〜〜〜ハラ減った! ひ〜ちゃん、ラーメン食い行こうぜ、ラーメン!」 俺はいつものセリフでひ〜ちゃんを誘う。返ってくるのはきっといつものキレイ な微笑み。 くっそ〜この顔がたまらねぇんだよな〜 なんかこぉ……ギュッとだなぁ……。 「京一、京一? どうしたんだ、ニヤニヤして。」 ………………あれ?
「……でさ、やっと如月が修理終わったって言うから……」 「……………」 結局俺のお誘いはひ〜ちゃんが如月の店に行くって言うんで後回しになった。 当然俺もついて行く。最近妙に気が合うってひ〜ちゃんは言うけど、絶対あいつ はひ〜ちゃんのこと狙ってるに違いねぇ。さらに店に壬生だの村雨だのが来てた日 にゃぁ、シャレにもなんねぇ。そんな奴の所にひ〜ちゃん1人でなんか行かせられるかっ ! 「……ぃち、京一っ!」 「あ、ああ。何だ? ひ〜ちゃん」 「何だはこっちだよ! どうしたんだ? さっきから。具合いでも悪いのか? そうだったら俺1人で店に行くから……」 そう言って俺の顔を覗き込む。漆黒の瞳が心配げに揺れて……あぁ、抱きしめ てぇ。 「い〜や、全っ然大丈夫だぜ!」 ひ〜ちゃんのことしか考えられねぇっていう病気はかなり重症かもしれねぇけど な。
「くぁ〜〜! それにしても今日はいつにも増して寒ぃなぁ」 「明日あたり雪でも降るかもしれないね」 ひ〜ちゃんは空に向かって息を吐く。透明度の高い蒼に、白が溶ける。 俺も思いっきり息を吐こうと大きく口を開く 「いてっ」 「どうした? あっ、唇切れてる……」 あちゃ〜今年もか。毎年冬になると唇の皮が硬くなって切れちまうんだよなぁ。 とりあえず舐めて湿らすけど、結局直んねぇし。 「はい」 「え、これひ〜ちゃんの?」 「何となく恥ずかしい気もするんだけど、俺も結構唇切れたりするから、ね」 それは薬用リップクリーム。……ってことはコレってひ〜ちゃんと間接キス? うっわ、すっげラッキー♪ 「ったくも〜、何ぼ〜っと見てるんだよ、ホラ、塗ってやるから」 ひ〜ちゃんのひんやりとした指が俺のあごにかかって、顔が近づく。 伏目がちな瞳でそっと唇をリップでなぞられる。白い肌に睫毛が落とす黒い陰ま で見える距離に、たまらなく……なる。
「はい、終わり……っ!?」 思わずそのままひ〜ちゃんの寒さで赤く色付いた唇に口付けた。 「……ききき、京一っ!!」 「ひ〜ちゃんも、ちゃんと塗らねぇと、な」 ……かなり苦しい言い訳だな、俺。 「だからってこんな塗り方しなくたってっ!」 「じゃぁ、俺が塗ってやるよ」 「結構!」 「だったら毎日俺にリップ塗ってくれっ」 「自分で塗れっ!」 あ〜ぁ、やっぱ怒ってるか。でも耳まで赤くなったひ〜ちゃんもめちゃめちゃ可愛いから、ひ〜ちゃんには悪いけど、俺の気分は最高調。 「あ〜冬って良いよなぁ〜」 「何いきなり訳わかんないこと言ってるんだよっ!」 だって上手く行ったらまた間接キスだぜぇ〜? ……なんてことは言ったら怒ら れるの決定だから言わねぇケド。 「さ、ちゃっちゃと如月の店行ってラーメン食おうぜ♪」 「……まったく……」
その後、俺は如月の店で速攻リップクリームを買わされた。 なんでそんなもん売ってるんだよチクショウ、骨董品店のくせに!
【和泉さんのあとがき】 正真証明のお初投稿SSです。魔人で京主になるとは・・・・ それにしても京一、ひ〜ちゃんにメロメロなんですが・・・・ 第1作めからしてこんな甘いもんを・・・この先が思いやられます(苦笑) 如月骨董品店にリップはさすがに苦しいなぁ〜とは思ったのですが、 肉まんやらコンビニ弁当やらが売ってるんだったらOKかな〜と。←無理すぎ とにもかくにも、あおいさんに感謝と愛をこめて(笑) |
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