■思惑いっぱい修学旅行:1日目■



修学旅行である。
俺はいやっってほど、楽しみにしていた。
だって、3泊4日も、3泊4日も!京一といっしょだから。
さもどうでもいい風に
「そういえば明日からだっけー」
なんて言ってたけど内心綿密な計画を立てていたのだ。
見てろよ京一・・・。ニヤリ。


−新宿駅−

集合時間だというのに、肝心の京一が来ない。
裏密やアン子に話し掛けられても俺は生返事で階段だけを見ている。
京一と二人で補習もいいけど・・・
この計画はどうしてくれるんだよ!
うわっ!ベル鳴ってる!早く来いよきょういちいー!
そこへ猛然とダッシュしてきたのは当の京一。
俺は閉まりかけのドアをむりやり開けながら京一を中に引き入れる。
間一髪。
とは言えないかな。京一は3回もドアに足挟まれてたし。
でも勢いづいて狭い通路に京一と重なり合うように倒れたのはラッキーだった。
どさくさ紛れにぎゅうぎゅう抱きしめる。
京一は走り続けてたから暴れる気力もないようだ。
幸先いいぞ。


−新幹線の中−

あくまでさりげなく、京一のとなりに座る。
醍醐や美里なんて、死んでも俺と京一の関係には気づかないと思うけど、
念のため。
ま、京一が嫌がるし、っていうのが本音なんだけど。
俺はいっくらでもばれてちょうだいって感じなのになあ。
そしたらきっと俺や京一にまとわりつく女の子がいなくなるだろうから。
たくさんの女の子より君なのだよ京一。
ぜーんぜんわかってないみたいだけど。

美里と小蒔はおしゃべりやトランプに夢中。いいぞ。
醍醐は一人で後ろの列。・・・寝てるな。よしよし。
俺は隣りで必死に駅弁を食べてる京一の脇をそっとくすぐった。

「ごほッごほッ!!な、なにすんだよッ!」

京一はむせて俺をにらむ。

「きょういちーきたないなあー!」

と、その声で振り向いた小蒔に言われ、京一は「だってひーちゃんが・・・」
と言うもののあとが続かない。
小蒔はなにも言わない京一を不思議そうに見たが、すぐに美里とトランプを続ける。


「なんで言わないの?俺にさわられてるって」

にやにやしながら聞く俺を京一は鋭くにらんで、そのくせ小声で言う。

「そんなこと言えるか!どんな目で見られると思ってんだよッ!」
「俺は別にいいけど?」
「俺はよくない!」
「なんで?」
「なんでって・・・あ、あたりまえだろッ!」
「ふーん。京一は、俺のこと嫌いなのか。そうか・・・」

俺は精いっぱい悲しい顔をして見せる。
それが嘘だってこと、京一だってわかってる。
嘘ってわかってるけど京一がこの顔に弱いってこともわかってる。
それを俺がわかってやってることも、京一はわかってる。
それでも、京一は許す。

「き、嫌いなわけ・・・ないだろッ!」

真っ赤になった京一に、俺はたたみかけるように言う。

「愛してる?」
「なっ、・・・知るかッ!」

京一はそっぽを向いてしまった。

子どもみてえ。これだから飽きないよなー。


−宿の夜−

はあ。
疲れた。
観光はしょうがないとしても。
山ん中歩いたり天狗とかなんなんだよー。
そのおかげで正座させられるし。
早く京一と二人にさせろ!
会う人会う人にそう怒鳴ってやりたかったけどさすがに押さえる。
京一がヘラヘラと女風呂覗きに行こうなんて言ったのがまた腹が立つ。
俺に言うなよ俺に!
あまり腹が立ったので、覗けないように犬神にあらかじめ報告しておいた。
抜け目ないな、俺って。

しかし!そうやっていらいらするのもここまでだ。
やーっと京一とラブラブ作戦を実行するときが来たぜ!
まずは。お、ちょうど。

「アン子ちゃん!」
「ああ、龍麻くん。正座終わったのね。どしたの?」
「あのさ、ちょっと・・・」

と言ってアン子を暗がりへ連れ出す。

---

適当な場所まで来ると、俺は振り向いてアン子と正面から向き合った。
いつもより距離を縮めて。
目と目が、今までにないほど近くで合う。

「な、なによーこんなとこ連れてきて。変なこと考えてるんじゃないのー?もーエッチー!」

アン子は照れ隠しか早口で茶化す。
俺は指を伸ばしていって、アン子の唇の上にそっと置く。

「・・・!」

アン子は息を呑んだ。もうしゃべれない。
しゃべったら、指が口の中に侵入してしまうから。
どぎまぎして真っ赤になるアン子を見て俺は目だけで笑い、顔を近づけた。
アン子がいっそう真っ赤になりながら、ぎゅうっと目をつぶるのが見える。
俺はアン子の体を抱き・・・耳元でささやいた。

「俺の写真、いくらで売ってんの?」

「・・・えっ!?」

アン子は目を見開いた。

「俺の写真、隠し撮りして、売ってんだって?ずいぶん儲かってるそうだけど」

アン子の体を離して言うと、アン子は硬直した。
そりゃそうだろう。キスされると思いきや悪事発覚。
恥ずかしいわカッコ悪いわ立つ瀬ないわでアン子はパニックになっている。

「あ、ええと、それはその、」

と、一生懸命言い訳するアン子を見て俺は勝利を確信した。

「アン子ちゃん、頼みがあるんだけど、聞いてくれるよね?」
「えっ!た、たのみって・・・どんな?」

まさか危険なことじゃないでしょうね・・・と不安げなアン子であったが、

「頼み聞いてくれたらさ、モデルやってあげるよ。
 そしたら隠し撮りなんてしなくていいし。
 それに今までの俺の写真なんて、どうせ全部制服だろ?
 でもモデルになったら・・・」
「モデルになったら・・・?」
「裸でもいいよ」
「は、裸!?」

アン子の頭の中はその需要と単価を考えていることだろう。
追い討ちをかけるように。

「もーかるだろうなー今まで100円200円だったのが、
 1000円出すやつもいるかもしんないしなー」

「う・・・や、やるわ!なんでも言って!」

アン子のその言葉を聞いて、俺は自然と笑みがこぼれた。

「簡単なことなんだ・・・頼みっていうのはさ・・・」



−それから1時間後−

俺と京一と醍醐の3人部屋。
もちろん布団が三つ。
だが部屋には俺と京一だけ。
醍醐はあと1時間は帰ってこないだろう。
それがアン子への頼みだったのだ。
何て言って連れ出してんだろうな・・・。
いろいろ想像して笑ってしまう。が。それどころじゃない。
むりやり作ったこのチャンス。
なにがなんでもものにしなくちゃな。

「京一・・・」

返事はない。もう寝てるみたいだ。
京一は俺と二人だったらきっと警戒しただろうけど、
醍醐もいるっていうんで無防備だ。
それがわかってるから付込んでるんだけど。
俺は京一の布団にもぐり込んだ。
宿の浴衣が既にはだけている。
襲ってほしいんだな?
我ながらステキな解釈。
京一が起きないように慎重にひんむいて、
俺も慎重に全部脱いで、
口づける。
・・・起きない。
それはそれで面白いかもな、と思って、
京一が寝てるのをおかまいなしにあちこち触ってはキスしていく。

・・・面白いな。
だって、京一は眠ってる。でも、体は感じてる。
俺の指の動きに、起きてるときより鈍いながらも、ちゃんと反応する。
それが面白くて、京一起きなくってもいいかな、なんて思ってたときに、
起きてしまった。

「・・・んん?ひーちゃん・・・?」

よっぽど眠りが深かったのか、京一はまだ寝ぼけている。

「あれ・・・夢の続きかな・・・」

京一、俺の夢見てたのかな。

「うん。これ、夢の中。」

と言ってみる。

「そっか・・・」

ほんとにばかだな。信じてる。
そんな京一があまりにもかわいいので俺は一気に突っ込んだ・・・。
ホラ、かわいい子はいじめたいじゃん。

「う、わッ!いてえッ!」

やっと目が覚めた京一。でもなにが起こったのかまだ理解できてない。
だが自分を見下ろしてる男(ていうか俺)と、
組み敷かれてる自分、いま真っ最中だってことがわかると、
京一は唖然としたみたいだ。

「な、にやってんだよッ!」
「なにって、わかんないの?」
「わかんないわけ・・・!」

あとの言葉は続かない。うるさいからがんがん攻めてやったのだ。
京一は痛みをこらえてるようにも見えたが、痛みだけじゃないのはわかってる。
悔しいから気持ちいいなんてそぶり絶対見せたくないのだ。
かわいいなあ。と思うとますますいじめたくなるんだけどね。
わかっててやってんのかなあ、京一は。

--- 

「あ、そういや・・・醍醐は?」

寄り添って寝ながら、京一が思い出したように言った。

「さあ。知らない。」

ととぼけて見せる。
京一はちょっと疑ったみたいだが、
体のだるさと眠さからいろいろ考えてられない風だった。

「寝る・・・。醍醐帰ってこないうちに、自分の布団行け・・・」

言い終わらないうちに京一は寝息を立て始める。
俺は物足りなかったけど・・・
明日のお楽しみだな。
京一に浴衣を適当に着せ、俺も適当に着る。
そして京一の頬にキスすると、俺は自分の布団に潜って眠った。


一日め終了。


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