□■□クリスマスは君と一緒に□■□





そのうち来るだろうと思ってそのまま病室で待っていた。

まもなく廊下を走る音がして病室のドアが乱暴に開かれる。
茶色い髪を振り乱して、京一が現れた。
しばらく肩で息をしていたが、ベットの上で座っている俺を見て、
心配そうに近寄ってきた。

「ひーちゃん・・・やっぱり、まだ具合悪いのか?」
「え・・・?いや、そんなことは・・・」
「だめだめ!ひーちゃんはいっつも無理するからな。ほら寝ろ!」

京一は俺がなに言うのも聞かずに、俺のトレーナーを剥ぎ取る。
下に着てたネルシャツも脱がされる。
俺は寒いのとびっくりしてるので慌てて布団を肩まで引き上げた。
さっきまで俺が着てたパジャマを手渡しながら京一が笑う。

「なんだよ。女みてえだな・・・ほらズボンもこれに着替えろよ」
「やだよー今日は退院して出かけるんだろ?」
「退院は今日の夜。それまで寝ろ!」
「なんで京一が決めるんだよ。それに眠くねーし」
「病人は黙って言うこと聞けッ!」

そう言った京一がなんだかとても嬉しそうなので、仕方なく京一の言うことを聞くことにした。
上下ともパジャマに着替えて、もそもそとベットに入る。
寝転がると、京一が布団を肩までかけてくれた。

「京一・・・心配、かけてごめんな」

京一は何も答えなかったけど、言いたいことはわかる。
心配したぶんほっとして、やけにそわそわしてしまうのも、
俺を守れなかった悔しさも、自己嫌悪も、そして柳生への憎悪も。
俺は手を伸ばして、ベットに腰掛けていた京一の膝に置く。
京一は驚いて小さく飛び上がって俺を見た。
そして京一を見ていた俺と目が合って、京一は真っ赤になった。
慌てて目をそらし、病室を見回していた京一が、上ずった声で言った。

「は、花、多いのな」
「花・・・?ああ、みんな持ってきてくれるんだよ。美里にもらったのがあの白いやつで、
 あれは小蒔、窓のとこにあるのがさやか、あの青いのは藤咲、ピンクのは本郷・・・」
「なッ!さやかちゃんまでッ!?」
「うん、毎日来てくれるよ。いつも違う花持って」
「はあ・・・やっぱひーちゃんってもてるのな・・・」

俺はにっこり笑って言った。

 A 「京一だってもてるだろ」
 B 「やきもち焼いてんの?」


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