2人だけだし、小さいケーキくらいでいいよな。
壬生の様子からすると、
今日がクリスマスだなんてことすらよく分かっていないようだ。
だから大げさにするよりも、
2人でささやかなパーティーっぽくしたらどうかと思ったのだ。
俺の退院祝いも兼ねてさ。
だって一番、壬生に祝ってもらいたいし。
俺は壬生の駅の近くで小さいケーキを買って
地図を頼りに壬生の家に行く。
壬生の書いた地図はとても正確で、
必要なことだけが書いてある。
そういうのを見ると、壬生って頭いいな、なんて思う。
そしてちょっと顔がゆるむ。
壬生の家には難なく着けた。
整頓されていて清潔な部屋。
壬生らしいな、と思ってまた顔が緩む。
少し躊躇したけど、冷蔵庫を開けた。
野菜や果物が入っている。
冷凍食品の類はない。
きちんと飯作ってんだな。
壬生の手料理食いたいな。
でも。
壬生は今日は遅く、疲れて帰ってくる。
その壬生に料理を作らせるわけにいかない。
俺だってちょっとは作れるんだぞ。
一品ものなら・・・。
冷蔵庫の中身と格闘するが、それらから何が作れるかまではわからない。
・・・カレーだな。
一晩寝かせた方がうまいけど。
・・・あ。
それを口実に泊まるとか・・・。
「カレーは明日の方がうまいから、いいよな・・・」
んー、だめだなそんな理由。
まあいいや。
俺はカレーを作りはじめた。
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よし。あとは煮込み続けるだけ。
不慣れなもんだから時間がかかってもう9時。
あと1時間か。
適当にテレビでも見ていよう。
ピンポーン
玄関のチャイムだ。
どうしよう。集金とかわかんねーぞ。
困りながらも玄関に立つともう一回チャイムが鳴った。
「・・・はい」
「あ、龍麻?僕だけど」
壬生!
俺は慌てて鍵を開ける。
「お、おかえり!はやかったな!」
すると壬生はちょっと赤くなって、
「待たせちゃ悪いから・・・」
とだけ言った。
うー!かわいいぞ!
壬生を中に入れてコートを脱がせる。
「いい匂いだね・・・カレー?」
「そう、作ったんだ・・・嫌いじゃないよな・・・?」
「ああ、大好きだよ」
一瞬、壬生は俺のことを大好きと言ったのかと思った。
でもカレーで。
俺の作ったカレーだからいいけどさ。
俺が飯食う?フロ?なんて新婚さんみたいに言うから
壬生はちょっと笑ったけど、すぐに口元を引き締めて言った。
「シャワー浴びてくるよ・・・」
なんだかその言い方は恋人同士みたい。
だけど壬生はもちろんそんな意味で言ったんじゃなくて。
・・・仕事の後だからだ。
仕事の後はいつもあんな悲しげな顔をしてシャワーを浴びるのだろうか。
俺はそれが切なくて・・・
A 壬生を抱きしめた
B でもシャワーから上がるのを待った
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